夜、ふと僕は目が覚める。同時に心も醒める。窓を見て不自然な光に違和感を感じる。鍵を外して窓を開ければ星屑が道一杯に落ちている。光の道が何処までも続いてる。

「  君を  待っていた  」

僕は窓から飛び降りて走り出す。何処までも続くこの道を。破片は僕を鋭く刺す。痛くないというのは嘘になるかもしれないけれど僕はどこかで望んでいるのかもしれない。この先に月の欠片が落ちてるかもしれないと、いや落ちていると心のどこかで望んでいる。だから走る。どうかこのまま朝は来ないで。この手が月の欠片に届くまで。
星のない空。月のない空。暗くて何処までも闇が続いてるよう。けど僕が走る道は光に満ちている。眩しいほどの輝きに。星の一欠けらが僕に言う。「皆を帰して」。空を見れば一粒だけ取り残されたように輝いていた。「僕は月に行かなくちゃいけない。行かなくちゃいけない」。突然星達が目覚めたかのように空に帰っていく。「待って!!」。星達は口々に言う。「もう遅い」「月は砕けた」「僕達は新しい月を探しに行かなくちゃいけない」「月はもう輝かない」「僕らでは守れなかった」「月は…死んだ」。僕は涙を流していた。「僕を月の所へ連れて行って」。「なら僕を掴んで」。星達は僕を乗せて地球の地平線へと連れて行ってくれた。
月は粉々に砕け散っていた。あの眩い光はほとんど残っていなかった。僕は泣く。星達も泣く。月が死んだ。空に光は戻らない。月は死んだ。闇は広がるばかり。砂の中に兎がいた。兎は何も語らなかった。ただ首をうな垂れるばかり。もう帰れない。全ては止まった。
朝がやってきた。太陽は言う。「月よ。なぜ空に上らない。君がいなくては僕は存在しなくなってしまう。僕らは二人で1つなのだから」。何も答えない月。代わりに僕は言った。「僕が月になる。空に上る。僕を月にして」。太陽は言う。「月になったら二度と地上には降り立つことは出来ない。降り立つ時は消滅する時なのだよ。それでも…」。僕の意思は変わらなかった。「なら今ここに『月の交代』の認める」。僕は目を閉じた。月の欠片が僕に言った。「君を…待っていた」

年月が過ぎ僕は落ちた。懐かしい地上に。そして僕は言う。
「   君を   待っていた   」

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